Sonya room

節約生活や読書の記録を綴ります

原田ひ香『三千円の使いかた』中央公論新社 

https://2.bp.blogspot.com/-hAjA900tGaQ/W-0hIg_ntVI/AAAAAAABQPk/IVHe1IC_H2YHgoikFKHPXmKqPDLJmxYegCLcBGAs/s400/syourai_sekkei_woman.png

原田ひ香『三千円の使いかた』中央公論新社 2018年 (中公文庫 2021年)

(※引用ページは単行本に拠ります)

 単行本で以前読んだ本が、文庫化されていたので、久しぶりに読み返しました。

 節約中の方が、肩の力を抜いて楽しめる本です。
〈あらすじ〉
 入院や離婚、介護費用等、お金の心配は絶えません。お金で困っている時に、少し前向きに、元気な気持ちになれる小説です。これは、御厨家の70代、50代、30代、20代のそれぞれの女性たちによる節約物語です。
〈感想〉
 節約やお金で困っている時に、肩の力を抜いて、前向きに楽に楽しめる本です。

 私は、まだ文庫が出版されるまえに、Youtube『りおの節約生活』さんの動画で、この本を知り、読みました。

 本書では、下記の言葉が印象に残りました。

 お金や節約は、人が幸せになるためのもの。それが目的になったらいけない(P.300)

 最初は20代の美帆の話から始まります。祖母の言葉、「三千円の使い方で人生が決まる」から、物語は始まります。

 つまり、三千円くらいの少額のお金で買ったり、したりすることが結局、人生を形づくっていくということです。
 その時、姉妹の真帆と美帆はお年玉にそれぞれ三千円をもらい、使ったのですが、二人のお金の使い方が、大人になってからの二人と通じていました。

 大人になった美帆は、多分、それなりの収入があり、節約しなくても暮らしていける生活だったのかな?と感じます。カフェに毎朝行ったり、利便性優先で部屋を決めたり、節約というより、今を楽しむため、お金を使っている様子がうかがえます。

 対する姉の真帆は、しっかりと予算を立て、プチ稼ぎにいそしむ節約家。本当に祖母の言葉の通り、少額のお金の使い方が人生(生活)を形作っているなと感じました。


 この他にも二人の母親の琴子の話や、祖母自身の話、また祖母の知り合いの話もオムニバス形式で出てきます。そして、最後に物語は美帆の借金(550万+利子付きの多額の奨学金)を抱えた相手との結婚の話で完結するのですが、私は最初読んだとき、母親の琴子の話がすごく印象的でした。

 今まで一切家事をしてこなかった夫の話です。

 最近「名もなき家事」という言葉をネットで目にしたのですが、ああ、本当にそうだなあと改めて感じました。

 家事は、掃除やご飯を作った達成感はあっても、誰も気づかず、報酬は得られず、感謝の言葉もなく、そこはむなしいなと。

 私も、子どもの頃、母がしてくれていた多くの家事を、当たり前のように受け取っていたんですよね… 母はパートで働きながら、家でも無償で家事をこなしていました。ごみ捨て、お弁当や洗濯、本当に大変だったと思います。

 琴子は入退院をしても、休むことない家事が続き、感謝の一言もない夫への不満が募ります。また、コツコツ貯めたお金も、子どもの進学や親や自分の医療費であっという間に消えてしまう…ぐったりして涙が出てくる状態でした。

 そんな状態の時に、FPからもらったアドバイスがすごく印象的でした。 

「今できることから始めるのがいい」「身体が疲れた時には、遠慮なくできあいの惣菜を使いましょう。何よりも、今は健康が一番大切です。」「いいんですよ。何を買っても外食するよりはましですから。そのかわり、月末は少し節約しましょうか。最後の週は買い物に行かず、家にある食材、買い置きの食材を一掃するつもりで、使い切ってしまうレシピを考えましょう。それだけで、ずいぶんスッキリしますよ。」(P233-234)

「全部、一歩ずつですよ。焦らないで。すべてを一気に変えようと思わないで。」(P237)

 琴子の章は、節約料理や、手の抜き方等、現実的な生活の上で教わることが多かったです。
 この小説を読んで、学んだことと、改めて感じたこと。それは、「遊び」「余白」ということの大事さです。例えば節約家の真帆でもお小遣い五千円は確保してました。私は最近、節約に囚われて、必要なもの以外、一切買わなかったため、ストレスになっていたのです。だから、せめて、三千円は自分のただ楽しみのために使おうと思いました。

 とりあえず、三千円を純粋に楽しむために使うことにしようと。役に立つからとかではなくて、純粋な楽しみのために、使おうと思いました。