Sonya room

節約生活や読書の記録を綴ります

垣谷美雨『あなたの人生、片づけます』

垣谷美雨『あなたの人生、片づけます』双葉文庫 2013年

 

[概要]

「部屋も心もスッキリお片づけ小説」(本書帯より)

断捨離、片づけをテーマにした短編作品集。片づけ屋・大庭十萬里が、片づけられない原因を心の問題としてとらえ、部屋とともに人生を片づけ、立て直していきます。

[感想]

 帯に示されているように、片づけ、断捨離をテーマにした作品です。この作品は、気軽に読め、なおかつ自分のモヤモヤや荷物を整理し、スッキリさせて、生活そのものを楽しもうと思える作品です。
 最初は汚部屋住人のアラサーOL春花のお話です。職場でいいように使われ、言いたいことを言えずにストレスを溜め込んでいる春花。

 心の状態が部屋に現れていて、少しずつ部屋を片づけていくにつれ、気持ちが明るくなっていきます。そして、最期には丁寧に、生活そのものを楽しもうという気持ちになりました。

 次は、妻に先立たれた木魚職人、展蔵。家事はすべて妻がしていたため、お茶碗ひとつ洗うことなく、掃除、片付けを多忙な娘が来てしていました。しかし娘がストレスを溜め込んで、本書の主人公である片づけ屋、大庭十萬里に依頼しました。そして、展蔵に買い物の仕方からタンス整理、料理を教え、展蔵は自分の生活を見つめ直すようになり、娘と向き合うようになります。

 三番目は、たくさんの物を大切にしてきた資産家の独居老人、泳子。すごく印象的だったのが、表向きは300坪の広いお屋敷を整理整頓して片づけているのですが、古い物を処分せず保管し続けるため、何十年もの間溜め込んだ不要なモノで家中が溢れかえっていました。ストック食材もセールで購入し、そのまま期限切れになり、死後も残るくらいになるほど収納していました。

 十萬里を通して、自分が寂しさから新しい物を集め、溜め続けてきたことに気づかされます。そして、残り少ない人生の時間を有効に使わなければと思うように変わりました。高齢者ケア施設で暮らす知人を訪ね、1Kの部屋にクローゼットとベッドとテーブル、ミニキッチンだけの生活を見学し、人生の店じまいを始めます。あの世には何も持っていけないから、今の生活を楽しみましょうと。

 最後は、息子を事故で亡くし、心を閉ざし、時間が止まったままの主婦。悲しみを乗り越えるのではなく、共有することで、止まっていたままの人生の時間が再び動き始めます。最後は、片づけ以上に、心のケア、黙って寄り添うということの大切さに気づかされました。
 
 私は子どもの頃から、カバン1個にすべて収まるような生活に憧れていて...赤毛のアンが全財産を自分の小さなカバンに詰め込んでいたみたいに。
  この小説は、身の回りを整理して、スッキリさせて、大事なものを見つめ直し、今という時間を楽しみ、丁寧な生活を送るための指針だと思います。

 ただ、最近は何でも捨てる、手放すではなく、今あるものを大切にしていきたいなと感じています。断捨離で本当に大切なものまで手放してしまわないように、それだけは気を付けたいなと思いました。